「便移植」って聞いたことはありますか?

別名「便微生物移植」と言いますが、腸内環境を整えるために、自分以外の人の便を腸内に移植する方法です。

便移植を検討している医者と看護師

便移植って、本当に便を移植するの?

直接の便を移植するのではありません。

2014年3月にもう国内で実施されている療法なのですが、健康な人の便を医療用の生理食塩水に溶いて濾します。

液体のほうを最大300gほど注射器に取り、大腸内に直接散布する方法です。

腸管型ベーチェット病、潰瘍性大腸炎などの難病の治療法として使われ、健康な人の腸内細菌叢を病気の人の腸に「移植」することによって、腸内細菌叢のバランスを整え、治療しようとする方法です。


移植できる人は決まっています

便を移植できる人は、配偶者および2親等以内の家族に限定されています。

誰の便でも移植できるというものではありません。


副作用は報告されていません

報道されたのは2014年なのですが、世界各国でもう60年ほど前から実施されている方法です。

数多くの実施例が報告されていますが、重い副作用の報告はありません。

意外にも、その安全性で医療現場から注目されている方法です。


どんな病気に使えるの?


今までに実際に治療に使われているもの


  • 難治性便秘
  • Clostridium difficile感染症
  • 過敏性腸症候群
  • 潰瘍性大腸炎

これからの治療に期待がされているもの


  • 肥満
  • メタボリックシンドローム
  • 糖尿病
  • 多発性硬化症
  • パーキンソン病

腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)に起きる異常は、上記のような病気に影響するといわれています。

直接の腸の疾患でなくても、腸は体調を整えるうえで大事な臓器です。

腸内細菌を整えれば、全身の健康に結び付くということが病名からもわかります。

Clostridium difficile感染症とは
少し聞きなれない病名ですが、重度の下痢、腹痛、吐き気、嘔吐などを伴う症状です。

高齢者、抗生物質を服用している人に見られる病気です。

Clostridium difficileとは病原菌の名前で、腸内に通常いなければいけない菌がいないときに増殖してしまう病原菌です。

耐性菌に近く、抗生物質は効きません。

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便移植のできる病院は?

次の病院では便移植の治療を行っていることがわかっています。

千葉大学医学部付属病院
・腸炎

順天堂大学医学部付属病院
・潰瘍性大腸炎

慶応大学病院

滋賀大学付属病院
・潰瘍性大行炎
・Clostridium difficile関連疾患

京都健康クリニック

このほか、治験を始めている大学も多くあるとのことで、2,3年内に治療ができる医療機関は増えてくると推測されます。


便移植の費用について

費用の面では、京都健康クリニックを例にとると、88万円から120万円となっています(2016年3月現在)。

慶応大学病院では便移植の治験も行っています。

ほかの大学病院などでも、現在治験中のところもあるようです。


便移植の効果のメカニズム

Clostridium difficile関連疾患などの難治性の腸疾患は、腸内に有用な善玉菌(腸内フローラのバランス)が極端にいないことが原因となるものがほとんどです。

慢性疾患の場合は、腸内細菌のバランスが良くならないまま腸内に炎症などが起きてしまい、さらに腸内細菌叢のバランスが悪くなって疾患化することがほとんどです。

疾病中の腸は、なかなか腸内細菌のバランスは良くなりません。

そこで、一気に腸内細菌のバランスを置き換えてしまう方法として、健康な人の腸内細菌叢をそのまま移植するという方法が考え出されました。


悪玉菌の働き

不健康な腸には、悪玉菌がたくさんいます。

悪玉菌の中には、代表的なものとして大腸菌とウェルシュ菌がいます。

また、超悪玉菌といわれるETBF菌も近年明らかになりました。

大腸菌の中には病原大腸菌といわれる種類があります。

腸管出血性大腸菌など、下痢や便秘を起こしたり、免疫力を弱めたりするものがあります。

実際に炎症のもとになる悪玉菌もあります。

ウェルシュ菌は、タンパク質をエサとして毒素を放出します。

下痢や腹痛、便秘の原因になるほか、がんを引き起こすこともあります。

ETBF菌は、フラジリス菌という悪玉菌が強くなると発生する菌です。

腸内の炎症のもとになり、大腸がんのリスクを飛躍的に高めてしまいます。

これらの悪玉菌は、健康な人の腸には1割程度しかいないのが普通です。

ウェルシュ菌やETBF菌に関しては、健康な人の腸にはほとんどいません。

2割は善玉菌、7割は日和見菌といわれる菌で健康な人の腸内フローラは構成されています。

健康な人の便を移植することは、善玉菌の働きをする菌がごっそり移植されてくることになるので、腸内フローラのバランスを整えることができるのです。


便移植の効果

欧米では日本に先駆けて、治験や実際に治療が始まっています。

欧米での成功率は9割を超えるといわれており、これからの具体的な日本での効果が期待されています。

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